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大気の状態が不安定とは
  • 大気の鉛直構造を表した用語であり、地上付近に暖かく湿った空気、上空に冷たく乾燥した空気で構成される状態の事を言います。
  • この状態になると上空の冷たく乾燥した空気は下降するエネルギーを、反対に地上付近の暖かく湿った空気は上昇するエネルギーを持つことになり、積乱雲が発達するなど激しい気象現象が発生する前触れとも取れます。

大気の状態が不安定な時に発生する積乱雲
大気の状態が不安定な時に発生する積乱雲

大気の状態が不安定な鉛直構造を表した図
大気の状態が不安定な鉛直構造を表した図


では、大気の状態が不安定を詳細に解説してみたいと思います。

1.空気の特徴

熱気球が上昇する原理を、習ったと思います。
空気の温度が上がると気体の密度が低くなり、軽くなる・・・
というアレです。
空気塊を温めると上昇する

気象学では、気象現象を、ひとつの空気の塊(空気塊)として扱うことが多いです。
今回もそれを例に、考えてみましょう。
ひとつの塊が、なんらかしらの原因で暖められたらどうなるか?

気体は軽くなり、上昇をします。

本当にそうですか?
実は、この図は重要な前提を省略しています。
何を省略しているか?
それは、この空気塊の「まわりの温度」です。
上昇するためには、「空気塊の温度」より、その「まわりの温度」が低くなくてはなりません。
しかし、「空気塊の温度」より「まわりの温度」が高ければ、空気塊は上昇せず、下に落ちてきます。

このように、気象学では、ひとつにまとまった空気の塊と、そのまわりの温度が重要になってきます。

「空気塊を温めた」=「上昇」という直感的な発想では
大気の動きを、見誤る可能性があるのです。


なんか、ツンデレっぽくないですか?
私が、気象に萌える理由が、そこにあるのかもしれません。

2.大きく2種類ある大気の状態

 大気の状態は大きく二つあり、大気の状態が安定している場合大気の状態が不安定の場合です。
まずは、安定している場合の説明をします。

2.1大気の状態が安定

大気の状態が安定の図
上空に行くほど暖かい

大気の鉛直構造(気象学では垂直と言わず、鉛直といいます)がこのような状態になっている事を「成層が安定している」とか「絶対安定」とかいう用語で表します。
上空は、とっても寒いイメージがありますが、その話は、面白いので後にとっておきますね。

では、仮定の話をします。
この大気が安定している状態で、地上付近が熱せられて、小さな空気塊が出来たとしましょう。図にしてみます。

安定状態で空気塊発生
安定状態で空気塊発生

空気塊は、図の黄色い部分です。暖められて黄色になっていますね。
黄色い部分が空気塊、その外側が「まわりの温度」になります。
まわりは青なので空気塊の方が暖かいという訳です。
結果、この空気は上昇を開始します。

どんどん上昇していきます。
でも、上空に行くにつれて「まわりの温度」が高くなっていきます。

安定状態で上昇開始
安定状態で空気塊発生し上昇

その結果あるときから「空気塊とまわりの温度が同じ」になるので、そこに止まろうとします。
さらに上空は、「空気塊よりまわりの温度が高い」ので
下降する力も加わってきます。
その結果、上昇気流が発生せず、雲が出来ないのですね。

雲一つ無い、澄み切った晴れの空は、絶対安定といえます。
この状態では「上空に行くほど暖かく」なっているのですね。
ちょっと不思議な感覚です。
空を見上げ、澄み切った青空をみると、ああ、あの空の向こうはあったかいんだなぁと思って欲しいです^^

でも、ちょっと待って下さい。
天気予報などで良く出る、富士山の山頂の気温をみて「上空の方が暖かい」とか思えませんよね。
ですが、殆どのとき上空の方が暖かいんですよ♪

それでは、先ほどお預けにしていた話をしてみたいと思います。

富士山山頂の方が暖かいとか何を言っているんだ、はるかは!
と思うでしょう。
富士山山頂-10度とか表示されてますもんね。
でも、これって、重要な条件を省略しているんです。
何を省略しているかというと、上空の気圧を省略しているんです。

富士山山頂と山麓、気圧が全然違うのです。
地上付近を1000hPaとすると、山頂付近は600~700hPaになります。
気圧が違うと何が違うの?
という感じですが、ごめんなさい、ここで一つの式を書きます。
(難しい話禁止なのですが、これだけは許して)
p=ρRT
(ピー、イコール、ロー、アール、ティ)
p=気圧、ρ=密度、R=気体定数、T=温度
これは、理想気体の状態方程式という式で、気圧は、密度と温度に比例するという簡単な式です。

式を変形して考えると、温度は気圧に比例する事がわかります。

もっとわかりやすく言うと、富士山山頂で-10度の空気があったとします。
これを、そのまま地上にもって降りたとします。
するとどうでしょう。
その空気の温度は、25度とかになるのです。
地上が20度であれば、その空気の方が暖かいのです。
ですので、上空の方が暖かいというのはこういった事からなんです。

ちなみに、飛行機のエアコン、ガンガン掛かってますよね。
あれは、上空250hpa付近の空気を1000hPaに加圧しながら、取り込んでいます。
何が言いたいかというと、取り込んだとき空気の温度は大体40度とかになっているんです。
ですので、真冬でもガンガン冷房を掛けているんですね。
これ、知っているだけで気象博士です^^

凄く横道にそれました・・・

ここで、ご理解頂けたと思いますが、テレビの天気予報などで使われている地上気温って、気象学で扱うためには、ちょっと問題があることが分かりました。

高度に影響してしまうので、大気の流れを扱うには不十分な単位なのです。
そこで考えられたのが「温位」という単位です。
単位というより、大きさですね。(ちなみに単位はK:ケルビン)

温位は、その空気を地上まで持って降りたら何度になるか?
という単位なので、高度に全く影響されない単位
なんです。
ですので、上空に行くほど暖かいというのは、温位が暖かいという意味と受け取ってほしいです。

ということで、真っ青で晴れ渡った空を見上げると、ああ、上空は暖かいんだなぁとおもってくださいね♪

<はるかのワンポイントレッスン>
さらに、それますねw
えと、成層圏という言葉を聞いたことがありますか?
これは、上の方で言っている「成層が安定している」という言葉から来ている用語なのです。

成層圏では、上空に上がればあがるほど、温度が上昇していきます。
なぜか?
それは、酸素分子と酸素原子が結合してオゾンができる時の化学反応によるエネルギーが発生するからです。
難しいことは、

初夏の紫外線は美容の大敵です

に書いています。
ちなみに、成層圏の一番温度の高いところは、地上から50kmくらいで、0度とかになります。
こうなれば、地上付近で発生した雲はここまで上り詰めるのは困難です。
ですので、飛行機から見た上空は、宇宙の色(青ではなく黒に近くなる)で澄み切っているのです。
※飛行機で窓側に座って必死で空を見上げる女・・・
※かわいそうな人じゃ無いもん(>_<)
※宇宙が好きなんだもん(T_T)

秋晴れのように澄み切った真っ青な空が広がっているとき、大気の状態は絶対安定だと思って良いです。
大気の状態が安定している意味と状態がご理解頂けたら、次は不安定の場合です。

2.2大気の状態が不安定

次に大気の状態が不安定の説明をします。

大気の状態が不安定の図
上空に行くほど冷たい

上空に寒気が流入するなどして大気の鉛直構造が、
高度と共に温度が低くなっていく状態を絶対不安定とか、大気の状態が不安定と言ったりします。

大気安定の時に説明したのと同じように、日中の太陽放射などで、地上付近に熱せられた暖かい空気塊ができたとします。

不安定で空気塊発生
不安定状態で空気塊発生

空気塊は、黄色に熱せられています。
空気塊の外側、つまり「まわりの温度」は青色なので、この空気塊は上昇を開始します。

不安定で空気塊が発生し上昇開始
不安定での空気塊上昇

空気塊は黄色で、まわりの空気は、薄黄などで温度が低いです。
さらに上空に行くほど、まわりの空気の温度が低くなるので、上昇する力が強くなります。

空気塊が上昇することにより、まわりの空気も摩擦で巻き上げられ、さらに上昇して、大規模な上昇気流となります。

不安定での上昇気流
不安定状態で空気塊発生し上昇して雷雨

そして大気中に溶けている水蒸気が、凝結して水滴となり、雲ができます。
(拡散過程と言います)
このような状態では、曇りになったり雨になったりします。

どのような時に発生するかというと、

・上空に冷たい寒気が流入してくる
・地上付近に暖かい暖気が流入してくる
・地上が極端に温かくなる
・前線付近など


という事になります。
特に、いつもの気温でいつもの天気だと思っていても、
上空に寒気が入ってくるだけで、絶対不安定となり、
急激な天候変化をもたらします。
また、そのとき発生する積乱雲は、強烈な雷雨をもたらすことも
あります。

「上空に寒気」
「湿った暖かい空気」
「大気の状態が不安定」


ニュースや天気予報で、これらの言葉が出てきたときには、気象現象に対して最大限の警戒をするようにしてください。

突風・雹・大雨・洪水・雷、竜巻、ダウンバーストなど
上空に入る寒気が、強ければ強いほど激しい気象現象になります。

ということで大気の状態が不安定というのは、上空には冷たい空気があり、地表付近には暖かい空気があるという異様な状態だという事が理解出来ていれば完璧です。

3.大気の状態をSSIで確認しよう

大気の状態が、安定しているか不安定になっているかを簡単に指数で見ることができます。
その指数は、SSI(ショワルター安定指数)と言います。
指数なので周りの環境や擾乱(じょうらん)によって変わってきますから、あくまで参考値になります。

また、高精細ナウキャストやアメダス、各種数値予報と組み合わせることにより、さらに正確に気象現象を予測する事が可能になります。
難しい話は置いておいて、まずは見てみましょう。

2018年8月13日の関東のSSI
2018年8月13日の関東のSSI
http://weather-gpv.info/ より引用

この図の黄色や赤色の部分が大気の状態が不安定と言えます。
よって、黄色以上(0やマイナス)になっている地域は警戒が必要だという事です。

では、この指数をどうやって算出したのか、少し専門的な話をします。

「おさらい」から入ります。
大気の状態が不安定な時、「上空に行くほど冷たくなる」と説明しました。
それは、空気塊が持ち上げられた時、上空の温度が低いと空気塊の温度が高くなり、どんどん上昇するからです。

SSIは次のように空気塊を強制的に上昇させて、どうなるか?を観測します。

最初に上空850hPa付近(夏だと1500m程度)の空気塊を、そのまま上空500hPa付近(夏なら5800m程度)に持ち上げます。
そして、その空気の塊が、周りの温度に比べて、どうなるか観測するものです。
観測といっても実際に空気を持ち上げる事はできないため、高層気象観測の数値データなどから算出します。

簡単な公式を書きます。

SSI = 上空5800m付近の温度 - 上空1500m付近の空気を5800mまで持ち上げた温度

ということで、
強制的に上空に持ち上げられた空気が周りの温度より低くなるとプラス
強制的に上空に持ち上げられた空気が周りの温度より高くなるとマイナス

という風になります。
周りの温度よりその空気塊が高ければ、空気はどんどん上昇します。
つまり、マイナスになればなるほど不安定になります。

-3度というのは、かなり大きい数値です。
例えば、5800m付近の温度が-10度と仮定します。
SSIが-3なので、1500m付近から持ち上げられた空気塊は-7度という事になります。
これは、かなり高温の空気なので激しい上昇気流になる事が予測されます。

それではSSIの確認方法です。以下のURLを開いてください。

GPV 気象予報

「地域」で観測したい地域を選択し、「SSI」をプルダウンすることで見る事ができます。
SSIは、いつでも確認できるようにブックマークなどをしておいて、他のガイダンス予測と合わせて利用するのが良いです。

まとめと注意点

・大気の状態が安定とは雲ができにくい状態
・大気の状態が不安定とは雲ができやすく急激な天候変化が発生しやすい
・大気の状態が不安定な時は、風雨、雷などの気象現象に特別な警戒をする
・SSIが0以下の場合は、大気の状態が不安定だと認識すること


はい、面白くなかったですね^^;
あ、オチを忘れていました。

背筋の伸ばして歩く
私は知っているから
重い雲の上は青い空♪

このフレーズが、もの凄く好きです。カラオケで18番ですw


いくら重い雲が広がっていても、私は上空が晴れ渡っていると知っているという素晴らしい歌です。
これは「どんなに薄暗いこころ」を持っている人も「必ず晴ればれしたこころ」を持っているという作詞家のメッセージを忘れてはなりません。
気象に従事する方は、皆さんこういう心を持っていると考えるとなにかいいですね(*^O^*)

ではでは。

コメント一覧

  1. 電波ちゃん徘徊ちう
    気象分野でツンデレって単語初めてみたような。
  2. はるか
    >電波ちゃん
    わたしの地方では「狐の嫁入り」とかいいますが、
    気象現象のツンデレって結構素敵なお話があるような気がします。
  3. たねのぶ
    とってもわかりやすかったです(^ ^)
    • はるか
      >たねのぶさん
      ありがとうございます(o^^o)
      この分野は学習し始めたばかりなので
      自分のお勉強にも役立っています^^
  4. 匿名
    真冬に上空の方が暖かいというのは初めて知りました
    • はるか
      冬は寒いイメージがありますが、成層が安定している日が多いので、基本的に地上より上空の方が暖かくなり、大気の状態が安定した状態となります。
      上空の温度は、https://n-kishou.com/ee/exp/exp01.html?cd=fxjp854&cat=e2こういったサイトで見ることができます。
      相当温位なので、私が説明している温位に水蒸気のエントロピーを加味した数値です。
      ケルビン表示ですから、273度が0度です。今見ると東京で283度ですから+10度という事で暖かいですよね。

      また、大気安定度はSSI(ショワルター安定指数)という指標で簡単に見ることができます。
  5. Y
    初めまして。
    気温勾配について大規模大気特論のテキストを読んでも全くのちんぷんかんぷんでしたが、はるかさんの解説のおかげでおバカな自分でもしっかり理解できました。10月の試験頑張りたいと思います。ありがとうございました。
    • はるか
      こんばんは。
      私の記事で参考になったようで、嬉しいです。
      10月の試験は、公害防止管理者でしょうか、気象予報士でしょうか?
      いずれにしても、社会課題を解決する省庁の資格ですので、試験頑張ってくださいね(*≧∀≦)ゞ

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